深海魚の「隠れた新種」を発見 「ホソオホラアナゴ」と命名
南日本の海に広く分布する新種の深海魚を、北海道大と東海大の研究チームが発見した。ホラアナゴ科の一種で「ホソオホラアナゴ」と命名した。すでに知られていた別の深海魚と姿がそっくりなため、長年混同されていた「隠れた新種」だ。

南日本の海に広く分布する新種の深海魚を、北海道大と東海大の研究チームが発見した。ホラアナゴ科の一種で「ホソオホラアナゴ」と命名した。すでに知られていた別の深海魚と姿がそっくりなため、長年混同されていた「隠れた新種」だ。
「ホソオホラアナゴ」は全長30~45センチほど。水深1500~2千メートルに生息している。口は大きく、目の後ろまで裂けている。
最初にその存在に気づいたのは、東海大講師の高見宗広さんだった。
高見さんは、静岡県の駿河湾で20年以上、深海魚の採集と調査を続けてきた。
この海域で「リュウキュウホラアナゴ」として採集された個体の中に、尾が細く、どこか顔つきの違うものが混じっていることに「違和感を覚えた」という。
そこで、このグループの魚に詳しい北海道大総合博物館の田城文人助教に連絡し、10年ほど前に共同研究を始めた。
しかし、標本の数が少なく、別種かどうか確認するのは難しい状況だったという。
高見さんは東海大学の調査船を使い、新たな個体の捕獲に取り組んだ。このとき活躍したのが、深海魚を採集するための特殊な網だ。
小型の船でも使用でき、海底近くにいる深海魚をなるべく傷つけずに捕獲できるよう工夫されている。東海大の福井篤・非常勤講師と高見さんが、試行錯誤を重ねて開発した。
この網を使い、2008年から2025年にかけて、駿河湾で計10個体の採集に成功した。
一方、田城さんは国内外の博物館などに存在する標本を詳しく調べた。
その結果、駿河湾のほかにも、紀伊半島沖や高知沖、奄美大島、小笠原諸島など、南日本の広い海域に生息していることが確認された。
新種の「ホソオホラアナゴ」は、「リュウキュウホラアナゴ」に比べて尾が細いほか、脊椎骨(せきついこつ)の数が多いなど、種として明確な違いがあることが判明。尾の末端近くの鱗(うろこ)の形も異なることが分かった。
「ホソオホラアナゴ」はこれまで、外見上の区別が難しいことなどから「リュウキュウホラアナゴ」と同一種として扱われていただけで、独立した種であることが今回、確認された。こうした「隠れた種」は、正式には「隠蔽(いんぺい)種」と呼ばれる。
深海魚の研究に長年貢献してきた福井さんの名にちなんで、学名は「イリィオフィス・フクイアイ」とした。
田城さんは「深海魚はまだまだ分からないことだらけ。今後も、隠れた種の存在を突き止め、深海にすむ魚たちの多様性を明らかにしたい」と話す。
研究成果は16日、日本魚類学会の英文誌「イクチオロジカル・リサーチ」オンライン版に掲載された。