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差別に心削られ「もうアイヌやめるわ」 何度も手を止めつづった半生

親戚はみんなアイヌ民族だった。お母ちゃんに連れられ練習した歌も踊りも大好きだった。

アルトクレフ Staff9 October 2026 at 23:00 UTC1 min read
差別に心削られ「もうアイヌやめるわ」 何度も手を止めつづった半生

親戚はみんなアイヌ民族だった。お母ちゃんに連れられ練習した歌も踊りも大好きだった。

でも、学校では差別を受け、親戚からもいじめられた。心が削られていった。

原田公久枝さん(58)=札幌市=。15歳のある日、お母ちゃんにこう宣言した。

その2年前、中学1年の時に「差別」と題した作文を書いた。「アイヌ」と言われ、いじめられていた。原稿用紙8枚に思いをつづった。

《私は、この作文の中で、みんなに、言いたいと思います。「みんなは、人権というものが、ほんとうに、わかっているのだろうか?」と、いうことです。》

作文は最優秀賞を受賞。新聞に取り上げられ、多くの手紙が届いた。

ただ、多くは悪意のある手紙ばかり。開封するとカミソリの刃が入っていたこともあった。だから、手紙はドラム缶に入れて燃やした。

喜んでくれるはずの親戚には「生意気だ」と言われ、疎まれた。

でも、やめたはずのアイヌは、どこにいてもついてくる。

仕事を探すため職業安定所を訪れた。「人と接する仕事がいい」と伝えると、担当者はあきれた様子で言った。

「バカなのか。アイヌは裏方の仕事をしてればいいんだよ」

パチンコ店で働いている時には、常連客から「お前アイヌだから数字読めんか」とからかわれた。

紹介されたコンビニで働き始めて1週間。ほかのパート全員が、店長に「アイヌと一緒に働けない」と迫った。自分が辞めるしかなかった。

「アイヌやめたって、いじめからも差別からも逃げられないんだ」

転機は2006年。アイヌ民族の友人を通じて「あの作文の少女に会いたい」と言う人に出会うなど、縁が広がった。

その縁で、北海道大学の授業を聴講するようになり、ついには北大アイヌ・先住民研究センターの研究員にもなった。

「ばあちゃんのことを知りたい」という思いからだった。祖母は、差別にさらされながらも、アイヌの歌や踊りを残そうと地元で「保存会」を立ち上げた人物だ。

「大変な思いをしただろうに、なしてだべかな~と思って」

時間をかけて「アイヌの世界」に戻ってきた。いまは「アイヌである自分と真剣に向き合う覚悟を持つしかない」と思っている。

原田さんの半生をつづった書籍「アイヌやめるのやーめた!」が、札幌の出版社「寿郎社」から発売されている。

光沢のあるピンクの文字で題名が刻まれた表紙には、原田さんが描いたポップな自画像。「『りくりゅうペア』に憧れてトリプルアクセルを跳びたいなって」

だが、本の内容は重い。書きながら、何度も手が止まり、涙を流したという。

「怒りなのか悔しさなのか悲しさなのか、感情が爆発して書けなくなる。そしてまた次の日に書き始めるの」

差別はいまもある。今年1月、コンビニでコーヒーを買ったら、店員から「アイヌが! 偉そうにコーヒーとか」と笑われた。

原田さんは言う。「これが現実。表紙と内容の差に衝撃を受けて、読む人が風邪ひけばいいのにって思ってます」

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