トランプ大統領はなぜキューバを攻撃するのか 人道危機が深まる島国
■【社説PLUS】社説を読む、社説がわかる

毎日のテーマに何を選び、どう主張し、誰にあてて訴えるのか。論説委員室では平日は毎日、およそ30人で議論し、総意として社説を仕上げています。記事の後半で、この社説ができるまでの議論の過程などをお届けします。
トランプ米大統領が、中米カリブ海の社会主義国キューバに、軍事力を行使する可能性をちらつかせています。
米州大陸をさす「西半球」での権益確保を外交の最優先課題にすえるトランプ政権は1月、南米ベネズエラを攻撃し、マドゥロ大統領夫妻を米国に拉致しました。この「成功体験」にとらわれ、キューバの体制を倒すことを目指しているのかも知れません。
しかし、大統領が連れ去られたベネズエラも体制が転換したわけではなく、マドゥロ政権の副大統領だったロドリゲス氏が暫定大統領に就きました。他国の体制を強引に転換させることは、もちろん許されることではなく、強大な軍事力を行使したとしても、容易ではありません。
しかも、米国は中東でイスラエルと共にイランを攻撃し、この戦争に「勝利」するめどが立っていないどころか、泥沼化の恐れさえあります。
トランプ氏は国際法を無視し、世界秩序を塗り替えようとしているようにも見えます。そんな暴君にキューバ情勢をめぐる社説で何を論じるべきか。
実は、日本と浅からぬ縁がある国。論説委員から多くの意見が寄せられました。
この社説を構えることを起案した論説委員は、どのような論調を想定しているのかを説明するにあたり、「迷いがあった」と打ち明けました。
「(米国やキューバに)動きはいろいろあるが、それがどこに向かっているのかが見えない。数日前、米軍が軍事行動の机上演習をしたという報道が流れた。そのあと、キューバ軍と米軍の幹部が会談したとも伝えられた。これらが何を意味するのか、わからないところもある」というのです。
司会役から「いまが節目というわけではないのか?」と問われると、「日々が節目ともいえる」と返しました。
トランプ氏の発言の揺れやぶれは、いまに始まった話ではありません。とはいえ、その振れ幅の大きさにはあきれるばかりです。
1月にはキューバの経済危機を受けて、「まもなく崩壊するだろう。ベネズエラから安価な石油の供給が止まったからだ」。その後、「政権交代は時間の問題だ」。「イランの次はキューバ」。要請があったとして、「(キューバと)対話する」。どの発言を真に受け、受け流したら良いのか。とらえどころがありません。
社説の内容を議論するなかで、ある論説委員は「(トランプ氏は)オバマ政権がやったことを否定し、ぜんぶひっくり返そうとしているのではないか」と、素朴な感想をぶつけました。起案した論説委員は「まったく同感」と応じます。



