「俺ダメかも」長男は笑顔をつくった 熊本地震、子どもの心のケアは
熊本地震の発生から1カ月となった28日、最大震度6強を観測した八代市の小中学校では新学期がスタートした。楽しいはずの夏休みを襲った大地震は、子どもたちの心に影を落としている。

熊本地震の発生から1カ月となった28日、最大震度6強を観測した八代市の小中学校では新学期がスタートした。楽しいはずの夏休みを襲った大地震は、子どもたちの心に影を落としている。
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7月28日、八代市の上田麻衣さん(40)は長男(14)と次女(8)を車に乗せて、習い事の教室に向かっていた。
突如、車体が大きく横に揺れた。ハンドルが取られ、ブレーキを踏んでも利かない。「なに、なに?」と子どもたちが声をあげた。前の車は急停止し、建物の屋根からは茶色い粉が舞った。「地震だ」。落下物の危険がなさそうな場所に車を止めた。
ひとまず教室に向かい、生徒や保護者らと「怖かったね」と声を掛けあった。子どもたちも、少し安心したように見えた。
だが、長男が暗い表情で近くにやってきた。「気分悪い。俺ダメかも」。重たい雰囲気にならないように、「なん言いよっと!」と笑いながら車へ戻るよう促した。普段は明るい息子が、作り笑いをしていたのが気がかりだった。
10年前の熊本地震では、自宅で寝ているときに強い揺れを経験した。「10年前を思い出して、ショックだったのかもしれない」
自宅ではタンスが倒れ、テレビも壊れた。1人で留守番をしていた長女(16)は、運良く無事だった。「もし下の子2人が家にいて、ものが倒れるのを見たら、トラウマになってしまっていたかも」
幸い停電はしなかったものの、一時断水し、その後も水の濁りが続いた。地震後の数日間は、家族全員でリビングで寝た。
8月中旬からは、市が体育館に設けた「こどもの居場所」に次女を預けた。もともと「ママっ子」だった次女は地震後、不安からか、上田さんから離れなくなっていた。
最初は家にいたがった次女は、毎日ボール遊びやミサンガ作りをして友達と遊ぶうちに、自分から「体育館に行きたい」と言うようになった。長男も落ち着きを取り戻し、28日は2人とも普段通りに登校した。地震の影響は残るが、上田さんは少しでも日常に近づけたらと願う。
八代市内では、心のケアのための面談をする学校があるほか、熊本県教育委員会は、被害が大きかった地域にスクールカウンセラーの追加派遣を検討している。
熊本県氷川町にある「護念寺」の副住職、西正樹さん(54)は、地震から数日後、長男の洸映(こうえい)さん(8)の異変に気づいた。
夜、家族で居間に布団を並べて寝ていたときだった。眠っていた洸映さんが「いやいや」と声を上げて泣き始めた。激しく寝返りを打ちながら布団を蹴り、おなかをかきむしる。起こそうとしても目は覚めず、落ち着くまで見守るしかなかった。
小学3年生の洸映さんが夜泣きをするのは、幼稚園のころ以来。西さんは「地震の怖さや、お寺に人が集まる生活が子どもの負担になっていたのかもしれない」。



