工芸品の裏にある人間の歴史 特別展で描く、アイヌ民族が生きた近代
北海道博物館(札幌市厚別区)で特別展「沙流川に生きる―サルンクルの近代」が開かれている。日高山脈から太平洋へと注ぐ沙流川の流域に生きるアイヌ民族が刻んできた歴史、現代を生きる人々とのつながりを、様々な工芸品の展示を通して表現している。9月6日まで。

北海道博物館(札幌市厚別区)で特別展「沙流川に生きる―サルンクルの近代」が開かれている。日高山脈から太平洋へと注ぐ沙流川の流域に生きるアイヌ民族が刻んできた歴史、現代を生きる人々とのつながりを、様々な工芸品の展示を通して表現している。9月6日まで。
沙流川流域に暮らすアイヌ民族は「サルンクル」と呼ばれる。サルンクルが生活のなかで使っていた日用品、アイヌ文様が刻まれた木綿衣、儀式で使われた道具などを展示。それらの持ち主を特定し、その人物が歩んできた歴史を紹介している。
特別展の企画委員長で、道博物館の学芸員を務める大坂拓さんは「工芸品展というと見た目のきれいさなどに目が行きがちだが、その裏側にある人間の歴史に着目した。工芸品を糸口として、アイヌが歩んだ歴史をひもといていく内容になっている」と話す。
その歴史とは、1869年から始まる。蝦夷地と呼ばれていた地域が「北海道」と名付けられ、国策による和人移民が流入し、サルンクルは少数者の立場に追いやられる。同化政策のための北海道旧土人保護法ができ、アイヌ民族は和人から「滅びゆく民族」と蔑視され、土地も文化も奪われた。同時期には伝染病も流行し、戦争にも巻き込まれていった。
サルンクルにとって激動の時代。困難がありながら、自分たちの将来を切り開こうと懸命に生きた人々がいた。日本の敗戦後には、伝統文化の保存や継承、復興に力を注いだ人や、権利回復に取り組んだ人もいた。こうした人々の足跡から、サルンクルの近代史を描き出している。
大坂さんは「沙流川流域には分厚い先人の蓄積がある。そこに生きたアイヌが発したり残してきたりした言葉で紡ぐ展示を試みた」と言う。なお困難な今の時代を生きるアイヌ民族にも焦点を当て、展示の冒頭では、あるアイヌ民族女性の言葉を紹介した。
「アイヌを語らずして大人になった。何度かチャンスはあったが、声にできなかった。黙っているうちに時代は変わるだろうと逃げていたが、私の腕をつかんで離さないものがあった」「それは『私につながる命を否定できるのか』という先祖の魂に呼び起こされる感覚だった」
大坂さんは、ほか6人の企画委員とともに約3年かけて特別展を準備した。「過去に起きたすべての歴史が今につながっている。事実を基盤に、どうすれば良い社会につながるかを考えるきっかけになれば」と話す。
一般1千円、高校生と大学生は350円。総合展示室とセットの場合は一般1600円、高校生と大学生が600円。問い合わせは道博物館(011・898・0466)へ。
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