トキと育った101歳、迎えた放鳥の日 「ヒナ育てる姿を見届ける」
見上げれば、トキが舞っている。石川県のトキスーパーバイザーで、101歳の村本義雄さんが子どものころは、当たり前の風景だった。本州から野生のトキがいなくなって56年。能登の空に再び舞うことを願い、31日に石川県羽咋市で開かれる放鳥式に臨む。

見上げれば、トキが舞っている。石川県のトキスーパーバイザーで、101歳の村本義雄さんが子どものころは、当たり前の風景だった。本州から野生のトキがいなくなって56年。能登の空に再び舞うことを願い、31日に石川県羽咋市で開かれる放鳥式に臨む。
村本さんは1925年、石川県羽咋郡下甘田村上中山(現羽咋市)で生まれた。松林に囲まれ、30戸ほどのかやぶきの家が並ぶ山あいの集落だった。
明け方には、近くの眉丈山(びじょうざん)からエサを求め、ファーファーと鳴きながらトキが飛んでいく。尋常小学校の分校の校庭で遊んでいると、上空に羽ばたく姿が見えた。
山にいたのは20羽程度だった。「一緒に暮らすようなもの。いまカラスを見るように、毎日トキを見て育った」と言う。
太平洋戦争に従軍し、2年半経った46年5月に帰郷する。家のまわりにあった松林は伐採され、山のトキは10羽ほどに減っていた。
当時、トキは保護の対象と考えられていなかった。親鳥は子を育てるため、水田に入ってエサをとる。植えたばかりの苗を踏みつけるため、害鳥とみられていたという。
国の特別天然記念物に指定されたのは52年。翌年、山のふもとでトキが撃ち殺されたと聞き、怒りに震えた。
同じころ、能登のトキは絶滅し、新潟県の佐渡島にしか生息していないという記述を図鑑で目にした。「とんでもないことが書いてある」。まだ山に7羽いるのを確認していた。
能登にトキがいることを知ってもらおうと、撮影に挑んだ。空を飛ぶ姿を捉えても、持っていたカメラでは黒い点にしか見えない。



